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【慢性疼痛を取り巻く思考の罠】破局的思考から脱却し痛みを卒業する

Date: 2023/04/15 | Writer: 金田 洋一

慢性疼痛を抱える方々にとって、心理的な要素というのが痛みの持続や増悪に大きな影響を及ぼすことがあります。

その中でも、『破局的思考』という痛みに対する捉え方は痛みと密接に関連しています。

この記事では、破局的思考とは何か、それが痛みにどのように影響するのか、そしてその対処法について解説します。

現在、慢性的な痛みでお悩みを持たれている方はぜひ最後までご覧ください。

【慢性疼痛を取り巻く思考の罠】破局的思考から脱却し痛みを卒業する

1.痛みが慢性化する流れ

皆さんは、痛みが慢性化する流れがあることをご存知でしょうか?

実は、痛みを感じた時に人は大きく二つのパターンに分かれると言われていて、これは以下の図で表されます。

ちなみに、この図のことを『疼痛回避モデル』と言います。

痛みを体験した際に、その痛みに対して恐怖心や不安などなく対峙できた場合は回復の傾向を辿りやすく慢性化しにくいと言われています。

一方で、痛みを体験した時に過度に痛みに対して注意が向いたり、痛みを極端にネガティブに捉えるといった思考パターンに陥ると上図のようなプロセスを経て、痛みが慢性化しやすくなると考えられています。

そして、この慢性化の入り口となるものが今回のテーマである『破局的思考』です。

2.破局的思考とは?

破局的思考は、痛みを最悪の形で捉え、極端にネガティブな見方をする思考パターンのことを指します。

慢性疼痛を持つ方が、痛みを「絶対に治らない」とか、「もう一生このままだ」といった過度に悲観的な見方をすることが一つの例です。

3.破局的思考には3つの種類がある

破局的思考には3つの特徴があり、それが「反芻」・「無力感」・「拡大視」です。

それぞれ特徴を以下の図に示します。

どうでしょうか?

いま現在、慢性的な痛みを抱えている方の中に上記3つに当てはまる方はいらっしゃらないでしょうか?

もし、「当てはまる…」と感じた方がいましたら、まずはこのあたりの思考パターンを変えていくことが慢性化のループを脱却する一つのきっかけになるかもしれません。

4.破局的思考が痛みに与える影響

それでは、破局的思考が痛みに対してどのような影響を与えるのか、次はその点について今回は3つご紹介します。

4-1痛みの増大

破局的思考は、痛みの感覚を増幅させることがあります。つまり、実際の痛み以上に痛みを強く感じることがあるのです。

破局的思考が痛みの感覚を増大させてしまうメカニズムを解説しようとすると、脳科学をはじめとする専門的な内容になるため今回は割愛します。

4-2ストレスの増加

破局的思考は、その負の思考パターンから精神的ストレスを増加させることがあります。

また、ストレスがたまると痛みに対してさらに注意が向きやすくなり、その結果として痛みが強く感じられるようになる事があります。

さらに、ストレスが原因で「睡眠不足」や「抑うつ症状」といった症状が生じることもあり、これらも痛みの悪化につながることがあります。

4-3自己効力感の低下

破局的思考は、自己効力感(自分が困難な状況に対処できるという自信)を低下させることがあります。

実は、多くの研究によって痛みの改善と自己効力感は強く関係しているとされており、逆にいうと自己効力感が低下すると、痛みに対処する力が弱まり痛みの改善が難しくなる傾向にあります。

5.破局的思考の対処法

それでは最後に、破局的思考に陥ってしまっている場合に行える対処法について2つご紹介いたします。

5-1認知行動療法

認知行動療法は、近年慢性疼痛のリハビリテーションとしてすごく注目されている方法の一つです。

というのも、認知行動療法は破局的思考を改善する効果的な方法の一つでもあるからです。

この方法では、自分の思考や行動パターンを見直し、より現実的でポジティブな考え方に変えていくことを目指します。

理学療法士や作業療法士、臨床心理士といった専門家の指導のもと、自分の考え方や行動について客観的に分析し、認知の歪みを修正していくことで、痛みの継続や増悪につながる破局的思考を緩和する事ができます。

5-2サポートネットワークの活用

家族や友人、医療専門家など、周囲の人々からのサポートが破局的思考を緩和する助けとなる事があります。

これは、信頼できる人に自分の痛みや悩みを話すことで、共感や理解を得られ、その結果として破局的思考改善の突破口になるからです。

同じく、慢性疼痛の当事者同士が集まるグループやオンラインコミュニティに参加し経験を共有することで、痛みに対して前向きに対峙できるようになる方も多いです。

私たち『ペインと。』も、少しでも当事者の皆様の悩みや不安等を共有、そして改善に繋げるためのコミュニティになりたいと思っておりますので、ぜひ私たちを頼って頂けたら嬉しいです。

6.【専門家向け】破局的思考の評価方法

最後に、理学療法士や作業療法士、臨床心理士の皆さんに向けて、臨床で活用できる破局的思考の評価方法をご共有いたします。

現在、破局的思考の評価方法として世界的に活用されているツールが『pain catastrophizing scale:PCS』です。

これは、全13項目の質問から構成される評価ツールで、冒頭でお伝えした「反芻」・「無力感」・「拡大視」をスクリーニングする事が可能です。

詳しい評価方法については、以下の記事で解説していますのでご興味ある方はご覧ください。

7.破局的思考まとめ

破局的思考は、痛みが慢性化する最初の入り口となる因子の一つであり、痛みに対して破局的思考が強くなると痛みが根強く残ってしまう事があります。

しかし、だからといって対処法がないわけではありません。

認知行動療法やサポートネットワークの活用など、破局的思考に対処する方法はいくつかありますので、もしいま現在今回の記事の内容に心当たりのある方は、少しずつ可能な範囲でこれら方法を試してみてはいかがでしょうか?

なお、これらの方法は専門家と一緒に進めていくことが一番好ましいとされているため、いきなり1人でスタートする前にまずはセラピストの方に相談して頂くと良いかと思います。

今回の記事では自分の思考パターンに気づくこと、そして破局的思考が痛みにどのように影響しているかを知って頂くことが一番の目的です。

「痛みと向き合う」というのは、決して容易なことではありません。

しかし、自分の考え方や心の働きを理解し、それに対処することでより良い状態へと導くことができるので、少しずつ、前に進んで参りましょう。

yoichi kanada

Writer: 金田 洋一 yoichi kanada

1994年:大分県生まれ/2017年:国家資格(理学療法士)取得後、福岡リハビリテーション病院へ入職/2018年:イタリア(サントルソ認知神経リハビリテーションセンター)へ研修参加/2018年:『きんたろーブログ』開設/2019年:うちかど脳神経外科クリニックへ入職/2020年:グロービス大学大学院(経営学修士課程)へ入学/2021年:脳と脊髄リハビリ研究センター福岡を創業・代表へ就任/2021年:福岡リハビリテーション専門学校 非常勤講師へ就任/2022年:グロービス大学大学院修士課程(MBA)修了/いたみ支援メディア「ペインと。」監修

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